シンポジウム『震災から10年:津波にねばり強い海岸林(もり)づくりの「これまで」と「これから」』当日に頂いたご質問に対するお答え

 

講演「宮城県名取市における100 haの津波被災海岸林再生への挑戦」について

 

質問1:海岸林再生へのご苦労は尽きなかったと思いますが、震災から11年で一番印象に残っている出来事は何かあったでしょうか?

回答:敢えて一番をとなれば、自分の決意を固めたときや、初めて播種した後の農家との宴会のことですが、一番驚いているのは、8時間ボランティアにリピートしてくれる方の多さや、我がことのように喜んでくださる方の多さです。2016年、長さ1.5mの発泡スチロール100本以上の不法投棄にも驚きました。(回答者:吉田)

 

質問2:東日本大震災以降、最近も各地で大きな地震が起きて、時には小規模な津波も起きています。これからの津波災害に備えて、新たに海岸林を作ろうとした場合に、吉田さんたちの取り組みから、役立つ教訓などがありましたら、教えていただきたいです。

回答:「海岸林と言ったら、首つり、ボヤ、不法投棄」と2011年に宮城県警の方が私に話してくれました。事業が公共工事で行われても、市民参加型だったとしても、将来的にこう言われたくないですよね。地域における確かなインフラであり続けられるよう、長期ビジョン、長期計画を共有することが大事だと思います。(回答者:吉田)

 

 

講演「海岸林の生育基盤盛土の硬さが植栽木の根系発達に及ぼす影響」について

 

質問1:土を硬くしない、柔らかくして根が伸びられる環境を作ることが大事と言うことでしたが、土が硬いまま放っておいた場合に、自然に柔らかくなったりすることはありますか?

回答:硬い土が風化などにより自然に軟らかくなることは、非常に長い時間を想定した場合にはあると考えられますが、私たちが調査した結果では、造成後数年~数10年経過した、非常に硬い土壌の場合、造成当時の硬さが維持されている状態が確認されたことから、土壌生成が進まない、非常に硬い土の場合にはあまり期待できないと考えます。(回答者:野口)

 

質問2:硬い土を柔らかくするには、掘り返す以外の方法はないのでしょうか?

回答:私が把握している限りでは掘り返す等の物理的方法しかありません。(回答者:野口)

 

質問3:(土の硬さの指標である)S値0.7と0.5は差があまり大きくないように思いますが,植栽の施工時にこれらの硬さをコントロールすることはできるのでしょうか。よろしくお願いします。

回答:S値0.7と0.5は、値としての差は0.2と小さいですが、実際にそれぞれの硬さの土を掘り返す等してみると明らかな差を感じることができます。盛土の硬さに対する施工の際の対策として、重機を盛土面の上を極力走行させないことや、盛土の施工を一層のみにする等がなされており、海岸林再生事業初期の盛土の一部を除いてはS値0.5が検出されることは稀です。(回答者:野口)

 

 

講演「滞水環境が植栽苗木の根系へもたらす影響」について

 

質問1:土の中の水分環境が大事だと言うことが分かりました。主にポットを使った実験結果のお話でしたが、実際の海岸林再生の現場で、土壌水分環境を改善するような工事を行った事例があれば教えていただきたいです。また、その後、植栽された樹木はどうなったのか、もし分かれば教えてください。

回答:一部の造成地では、排水路や遊水地が造成されている例が報告されています。私が把握している限りになってしまいますが、今のところ、このような取り組みがクロマツ根系へ及ぼす影響について報告した例は非常に限られており、今後調査していかなければならないことだと考えております。(回答者:藤田)

 

質問2:ご発表の中で,元から存在している根と,新しく生えた根は,区別がむずかしいと思うのですが,どのように判別されたのでしょうか。よろしくお願いします。

回答:滞水を行う前に、メッシュ状の筒を苗木の隣に埋め、滞水終了時にそれを掘り出し、筒に入り込んだ細根、つまり、滞水中に成長した細根を評価しました。(回答者:藤田)

 

質問3:滞水に強い樹種としてはどのようなものがあるのでしょうか?またそれが実際に植栽された事例があれば教えて下さい。

回答:滞水に強い樹種として、ヤマハンノキ、ヤチダモもポット試験で調査し、その結果この2種は滞水環境下でも細根を成長させることができることが分かりました。この2種は海岸林への導入が検討されている樹種で植栽例はありますが、滞水環境ではまだありません。(回答者:藤田)

 

 

講演「津波防災のため整備された防潮堤のり面における自然再生の取り組み」について

 

質問1:東松島市と協力して自然を再生する活動は大変重要なことと思います。植生が自然な状態に戻るまで、どのくらいの時間が必要となるのでしょうか。もし分かれば、教えてください。

回答:潜在的酸性硫酸塩土壌での海岸林再生の前例が無いので分かりませんが、もし順調に生育すれば植栽から30年程度で自然な状態になるもしれません。(回答者:渡辺)

 

質問2:カキ殻粉砕物による土壌の中和効果はどれくらい長続きするのでしょうか?

回答:発表では紹介していませんが、2021年の調査でも中和効果を確認しています。カキ殻粉末の形状、施用量、施用範囲、施用する場所の土壌条件やその土壌材料が保持している酸性原因物質(パイライトなどの硫化鉱物)の量、降雨量などによって、中和効果の持続性は変わります。憶測ですが、今回植樹した防潮堤では、5年以上10年未満で中和効果が継続するかもしれません。中和効果の持続性については、今後、継続的に調査して明らかにします。中和効果がなくなり、木の生育が悪くなるようであれば、カキ殻粉砕物を追加散布することも考えています。(回答者:渡辺)

 

質問3:酸性硫酸性土壌を簡易的に明らかにするには土壌pHの測定外に何か簡易方法はありますでしょうか?

回答:酸性硫酸塩土壌の判定は、pH(H2O2)を測定する必要があります。pH(H2O2)の測定は、手間がかかるので、まずはpH(H2O)で測定して、例えば4未満であれば、酸性硫酸塩土壌を疑います。今回ご紹介した防潮堤のように、所々裸地が見えて草木が疎らに生えている状態が何年も続いていたり、もともとは海の底にあった土であったりというのは、潜在的酸性硫酸塩土壌のサインの一つとなります。しかし、全く別の要因(水はけが悪い、土が硬いなど)で、草木が疎らに生えることもあります。植生や土の由来だけで酸性硫酸塩土壌と判定することはできないため、pH(H2O2)を測定する必要があります。また、酸性硫酸塩土壌の原因物質は、土壌資材中に含まれる硫化物ですので、土壌中の硫黄含有量を燃焼法などにより定量分析することで判定する(全硫黄含量が0.1%以上の場合は酸性硫酸塩土壌)ことも可能です。(回答者:渡辺)

 

質問4:対照区の苗の活着率はどれくらいでしょうか?

回答:カキ殻粉砕物有りの区画と無しの区画というように、区画分けはしていません。カキ殻粉砕物は苗木周辺にピンポイントで散布しています。土壌分析の際は、散布した場所と、すぐ近くで散布していない場所から、土壌を採取して調査しました。研究者の立場としては、カキ殻有り、無しの植栽区画を作成して、活着や成長の違いを明らかにしたいところです。しかし、当社が取り組む植樹活動は、調査研究が目的では無く、あくまでもボランティア植樹を成功させるためのサポート的位置づけの調査なので、深掘りした調査はしておりません。(回答者:渡辺)

 

質問5:アカマツやクロマツやその他の広葉樹での最適pHについてこれまで分かっている知見はありますでしょうか。

回答:日本の森林土壌のpHが4.5~6なので、その範囲であれば一般的に問題ないと思います。(回答者:渡辺)

 

質問6:参加者が多いにもかかわらず地域の在来種の生育が追い付かない、とのことでしたが、何か対策はありますか?

回答:地域の在来種の種子は、採取可能な場所が限られていることや(地主や管理者の許可を得て採取しています)、樹種によっては種子から苗に育てることが難しいこと等の理由から、現在は大量生産が難しい面があります。種子から苗に育てるまでの生存率の向上は課題の1つです。(回答者:渡辺)

 

質問7:牡蠣殻とバーク堆肥を入れなかった場合、アカマツやクロマツでの生存率はどのくらいでしょうか?また30cmより深い土層ではpHの上昇はみられないようですが、根の張りにはどのような影響があると考えられますか?

回答:牡蠣殻とバーク堆肥を入れなかった場合、アカマツやクロマツでの生存率の違いは調査していません。どちらも耐酸性植物で、周囲から飛来してきた種子が芽吹いて、防潮堤上に自然定着しています。pH(H2O2) 4程度であれば、初期活着と初期成長(もしかすると今後の成長)も可能なようです。30 cmより深い土層でのpHの上昇は認められておりませんが、今後、継続的に調べます。堀取り調査の結果、アカマツ、クロマツでは、垂直方向に30 cm以上根が伸びていますが、トベラ、シャリンバイはそれほど伸びていないので、もしかすると、酸性の影響を受けているかもしれません。(回答者:渡辺)

 

 

講演「秋田県における海岸林への広葉樹導入にむけた取り組み」について

 

質問1:秋田県では、海岸林に広葉樹を積極的に植えていることを初めて知りました。今後、どのくらいの面積の海岸林に広葉樹を植えていく予定でしょうか?

回答:具体的な面積について答えることは難しいです。秋田県では松くい虫被害が現在進行形で発生していますので、その被害面積に応じて増減することが想定されます。(回答者:新田)

 

質問2:抵抗性マツの導入は進んでいますでしょうか?

回答:秋田では1系統しか抵抗性クロマツが作出されておらず、苗木の供給は昨年始まったばかりなので、今後採用されるケースも増えると思います。(回答者:新田)

 

質問3:近年植栽さている混交林とは 具体的に クロマツとどの樹種の成績がよさそうでしょうか? 植栽は海岸最前線の内側でしょうか?

回答:クロマツと混交している樹種はスライドで示したケヤキ、シナノキ、エゾイタヤ、カシワが主です。植栽は主に内陸側です。最前線では広葉樹の枯死リスクが高いのであまり推奨できませんが、広葉樹を混交させる場合はクロマツを先に植栽し、数年後に広葉樹を入れるという手法が考えられます。(回答者:新田)

 

質問4:海岸林では広葉樹の成長が悪い場所があるとのことでしたが、クロマツの成長には問題なくても広葉樹の成長が悪いということでしょうか?

回答:その解釈でおおむね正しいです。ただ広葉樹が生育不良となる海から近いところなどはクロマツといえども成長は抑制されます。(回答者:新田)

 

 

講演「西日本における広葉樹海岸林の意義と可能性」について

 

質問1:西日本には常緑広葉樹で構成された海岸林もあると言うことが分かりました。松枯れの結果、クロマツやアカマツの海岸林は、もうほとんどないと言うことでしょうか。西日本の海岸林の状況について、教えていただけたらと思います       

回答:ほぼすべてが広葉樹林となった海岸林はまだまだ少ないと思われますが、海岸林の内陸側に広葉樹が大きく育っている場所はたくさんあります。そのほかにも、クロマツ林をしっかり管理されている場所もちゃんとあります。なお、昔から海岸林に植栽されてきたのはクロマツで、同じマツ類のアカマツは海岸林にはあまり使われていません。(回答者:大谷)

 

質問2:海岸林での大きな広葉樹が育つのは内陸側で,海岸側はクロマツのみ,という考えで合っていますでしょうか。よろしくお願いします。

回答:西日本の太平洋岸は日本海側に比べてかなりおだやかな環境ですが、それでも海岸林の最前線では広葉樹の樹高が抑え込まれるということがおこります。内陸に向かうにつれて樹種が代わりながら徐々に樹高が高くなりますが、防風や飛砂防備といった海岸林の機能を発揮するほどの樹高にまでなるには、海岸林に十分な奥行きが必要となります。あまり奥行きのない海岸林においても樹高をしっかりと確保するには、最前線にクロマツを生育させるのが確実な方法だと考えられます。樹高のある樹木が最前線に立っていれば、その内陸側には広葉樹が生育可能だと考えられます。(回答者:大谷)

 

質問3:クロマツが海水(塩分)に強いのは、どのようなメカニズムなのでしょうか?

回答:クロマツと他の樹種を比較して、クロマツが塩分のストレスに強いことはさまざまな実験から明らかですが、どのようなメカニズムかというのはなかなか難しい問題です。私は植物の生理現象については専門外ですので、まちがっている部分もあるやも知れません。樹木が体内に塩分を吸い込む前と後に分けて考えますと、まず植物が外側から塩分(潮風や海水)にさらされている状態では、クロマツは物理的に葉が頑丈、塩分を吸収しにくい葉の構造をしている、乾燥に強く海水に浸かっている間でも水を吸わなくても大丈夫、根から塩分を吸い上げにくいといったことがいえます。体内に塩分を吸い上げてしまったあとは、ナトリウムや塩素イオンによって生理的な障害が出にくいということだと思われます。マングローブを形成する樹木では体内に吸い上げた塩分を体外に排出する機能がありますが、クロマツがそのような機能をもっているかどうかはわかりません。

 なお、24時間より長時間クロマツ苗を海水に漬けますとさすがに枯れますし、台風の高潮で数日にわたって海水に浸かった海岸林でクロマツが大規模に枯れたという事例もあります。あくまで、他の樹種に比べてクロマツは塩分に強いとご理解ください。

 クロマツが海岸林に適しているということは、以下の文章にまとめられていますのでご一読ください。pdfを無料でダウンロードできます。

近田(2013)なぜ,クロマツなのか? -日本の海岸林の防災機能について-

http://jscf.jp/journal/pdf/JSCF12(2)23-28.pdf

(回答者:大谷)

 

 

講演「防災林として植栽された広葉樹やクロマツの根の発達」について

 

質問1:今後は、防災林の造成のために、広葉樹も活用されていくということでしょうか。

回答:クロマツは大変優れた樹種であることは確かです。ただし、マツ枯れ病への対応や植生の多様性を高めるために広葉樹の導入も行う場所が出てきております。(回答者:太田)

 

講演「土を掘らずに“ 根張り”を評価:地中レーダーの可能性」について

 

質問1:今回の海岸林再生地でレーダー探査をやった事例はありますか?どのような結果になるのか興味深いです。

回答:レーダーが小さな樹木(=細い根ばかりで太い根があまりない)が苦手なこと、貴重な海岸林再生地を掘り返すことが躊躇われたことから、まだ実施しておりませんが、調整伐(本数調整を目的とした伐採)にあわせて、レーダー探査(および根系掘り取り法によるレーダー探査の確かさの確認)を行う予定です。(回答者:谷川)

 

質問2:1本の木の根をレーダーで探査するのにかかる時間はどれくらいですか?

回答:測線数に寄りますが30分くらいです。その前の下見や地表面掃除などが別途必要です。(回答者:谷川)

 

質問3:他個体との識別は技術的に難しいと思いましたが、実際に掘った根の位置とずれが大きかった樹種(個体)はこの影響は考えられないでしょうか。造成された海岸林のような、林分構造が単純な場所では地中レーダーが効果的だなと思いました。

回答:他個体の根が対象木の探査エリアに侵入していることは、常に起こっている現象です。そこで私たちは、根系掘り取り調査では他個体についても座標と直径を測っています。今回の発表では鳥瞰写真にレーダー探査位置を載せましたが、別途、座標照合も行い、対象木の根張りを評価する予定です。ご指摘の通り、林分構造が単純なほど、レーダー探査には向いています。(回答者:谷川)

 

質問4:斜めにはえている根の直径はどのように補正されていたり,計算されたりしているのでしょうか。

回答:”水平方向に斜めに生えている根の直径につきましては、補正法があります(Tanikawa et al., Plant and Soil 2013, 2014)。まず何も考えずに地表面をスキャンし、根の波形を見つけます。その後、その測線と直交する測線を波形の上を通るように採ります。さらに、「その波形の上を通り2測線間と45度で交差する測線」をとります。これら3つの測線で得られた信号をある式に入れることで、直径は補正できます。垂直方向に斜めに生えている根は、まだ補正法というほどのものが報告されておりませんが、コンピュータシミュレーションで垂直方向に斜めに生えている根の映像が再現できるので、補正法もいずれ見つかると考えております。本日のお話の一部は、谷川所属研究室のHP(https://sites.google.com/view/plant-soil-nu)→「研究紹介」→「地中レーダ①~③」および「地中レーダがもつ樹木の根系可視力を減災に生かす試み」というページでも紹介しておりますので、よろしければご参照ください。(回答者:谷川)

 

 

シンポジウムの内容全般に対するご質問

 

質問1:震災で被災した太平洋岸に植栽された広葉樹の生育状況は、どのように評価されているのでしょうか?

回答:測定者によって評価方法は異なります。海岸林に植栽された広葉樹は、多くの場合、活着状況が悪かったり、植栽後の生育も不良だったりすることもあるため、地際直径、樹高の測定の他、枯れ下がり、着葉量、主軸代わり、萌芽数などから生育状況を総合的に評価することが多いです。(回答者:小野)

 

質問2:震災後、各地で津波対策として防潮堤も建設(再建)されています。受益者である住民や地域社会は、海岸林だけでなく防潮堤も合わせてお互いの利点、欠点など検討し、総合的な視点から「津波に強い海岸」づくりを目指してほしいと考えると思います。そういった研究は進んでいるのでしょうか?ほとんどの海岸では防潮堤の内陸側に海岸防災林が再生されていますが、奇跡の一本松の岩手県陸前高田では高さ12メートルのメーンの防潮堤の海側に松林が造成されています。保健保安林としては望ましいと思いますが、海岸林の防災機能についてはどうなのでしょうか?

回答1(後半部分のみ):樹種、配置、樹形などどういうものであれば津波耐性や防風機能が高いのか、あるいは低いのか、海岸林の防災機能と海岸林の構造の関係解析が今後の大きな課題と認識しております。(回答者:新田)

回答2:総合的な視点から「津波に強い海岸」づくりを考え、目指すというのは、非常に重要なことだと思います。沿岸部の復興に関しては、中央防災会議や東日本大震災復興構想会議、東日本大震災復興対策本部等の国の復興指針と整合する形で、海岸林の再生、復興方針が示され、それに準じて取り組まれてきた背景があります。具体的には、海岸林単独で沿岸域の減災・防災を達成すると言う位置付けではなく、防潮堤などの構造物や自然砂丘などとも組み合わせる形で、沿岸域の防災・減災を担う一翼として海岸林を再生するというものです。グレーインフラおよびグリーンインフラをどのような形でハイブリッドに配置するのがベストマッチなのか、という視点で、今回の「津波に強い海岸づくり」の取り組みに対する評価は、近い将来、発生が懸念される津波災害に対する備えを考える上では、非常に重要になると考えられます。今後も、さまざまな分野の関係者と連携しながら、調査・研究を継続して参りたいと思います。

 また、陸前高田の事例についてのご質問ですが、植栽が完了した高田松原の現状から俯瞰すると、12.5mの防潮堤の前に再生された海岸防災林の現在の樹高は小さく、何のための防災林だろうか、と思われるかも知れません。しかしながら、津波被災前の高田松原の松林の中にも、防潮堤は第一線堤、第二線堤が配置されており、構造物である防潮堤とともに松林が配置されていました。また、将来、高田松原の松林は、50年後おいては、防潮堤の高さ、あるいはそれ以上になることを想定し、再生に取り組まれており、防潮堤とともに減災機能を発揮することが期待されています(例えば、http://www.gasdemori.jp/story.html)。津波が防潮堤を越水した場合には、防潮堤背後を洗掘する可能性もありますので、その前縁部で波力の減殺をする海岸防災林としての配置も重要であると考えられます。(回答者:小野)