気温

気温は、昔から観測されている基本的な気象項目で、動植物の生育に大きな影響を与える因子です。その土地に成立する森林タイプを決める主要な環境因子のひとつでもあります。  

ここでは、森林内で気温を正確に測定するための、適切な温度計の選択や設置、記録の方法について説明します。  

(文責:玉井幸治)

測定方法

温度計の選択

気温の観測で大切なのは、「温度計感部の温度」が「空気の温度」に可能な限り近づくように工夫することです。気温が「空気の温度」であるのに対し、温度計で実際に測定されるのは「温度計感部の温度」だからです。

そこで、温度計は感部が細いものを選びます。細いほど感部の熱容量が小さく、空気との熱交換がスムースで、「温度計感部の温度」と「空気の温度」の差が小さくなるからです。しかし、感部が細すぎると設置操作がしにくいという短所もあります。

温度計の設置

温度計は、

    1. 風通しが良くなるように
    2. 太陽光や雨が当たらないように
    3. 地面の温度の影響を受けないように

設置する必要があります。

たとえば、温度計を百葉箱の中に設置したり、感部を筒や覆いの中に入れたりする方法があります。その際には、筒や覆いに感部が直接触れて、熱が伝わらないように注意します。また、直接触れていなくても、百葉箱や筒、覆いからは絶対温度の4乗に比例したエネルギーが感部に放射されます。そのエネルギー量を小さくするために、百葉箱や筒、覆いの外側を白くして温度が上がるのを防ぎます。

広い空間が得られず、小さな筒や覆いを使う場合には、ファンを回すなどして強制的に風通しを良くするのが理想的です。電源が得られない場合には、自然通風を利用する無電源通風筒を活用することもできます。

気温を測定する高さは、地表から1.5mとするのが一般的です。地面からの温度上昇・下降の影響を少なくするためです。

なお、一般的な気温の観測方法については、気象庁の気象観測の手引き(PDF)で、周辺の条件などが定められています。

無電源通風筒を用いて気温観測を行っている例

測定と記録の工夫

気温は1日の中で、日の出直前に最低を、午後2時ごろに最高を示すことが多くなります。日ごとの気温の変化を調べるためには、毎日同じ時間やタイミングで測定する必要があります。

最も基本的な方法は、同じ時間に温度計の温度を読み取って記録する方法です。近年は、自動的にデータを記録する温度センサーも、安価に入手できるようになりました。観測者が観測場所に出向くことなく、毎日同じ時刻に自動的に観測を行い、データをパソコンによって整理することも可能です。

また、一定間隔で自動撮影する機能のあるカメラを使うのも1つの方法です。温度をデジタル表示する温度計と組み合わせ、カメラで定期的に撮影することによっても、気温を自動的に観測することできます。

執筆者より(ワンポイントアドバイス)

温度センサーの具合が悪く正常な値を示していない時のデータは、記録として扱うことはできません。センサーの具合が突然悪くなると、直ぐにわかります。しかし少しずつ悪くなっていく場合には、注意していないと見落としてしまいます。いつまでを正常値として扱い、いつからを正常ではない値として扱うか、判断が難しいことも良くあります。その危険性を少なくするために、多くの場所で測定した値や気象庁などの報告する月平均値などと、毎月1回程度は確認するようにしたほうがよいと思います。

気温から環境をさぐる

気温は、地球規模での気候メカニズムの影響を受けます。太陽から地球に達するエネルギー量は赤道に近いほど多くて両極に近いほど少ないので、気温は、赤道近くで高く両極に近いほど低い傾向になります。

同時に気温は、測定場所の環境の影響も受けます。測定場所が森林内のように日陰であれば、層でない場所に比べて気温が低くなる傾向になります。地表面が土やアスファルトである場所では、草地や水面よりも気温が高くなる傾向になります。 

いろいろな場所で気温を継続的に測定すると、気温が高いあるいは低い傾向にある場所が解り、気温に影響を与える環境が解ります。また、いろいろな場所の中で、ある場所のみで気温の傾向が変わったら、その原因について考えることができます。森林が成長するにつれて、気温の傾向も変わるかもしれません。

大気中の二酸化炭素濃度の上昇による地球温暖化も、気候変動の代表的な現象として挙げられます。地球温暖化の進行は、世界の平均気温の変化として観測されていますが、地域で定点を決めて身近な環境を長期間モニタリングすることでも確かめることができます。気温はあらゆる生物的・物理的プロセスに関与する、非常に重要な因子であり、森林生態系にもさまざまな影響が及ぶことが心配されています。

参照、関連サイト

関連サイト

気象庁の気象観測の手引き(PDF)

詳しくは、この本

森林立地調査法
第Ⅳ章 4気温、森林立地調査法編集委員会編、132-136p  1999 博友社、東京