気候変動と森林生態系

森林立地環境分野の項目を測定することにより、気候変動を確かめたり、気候変動の生態系への影響を考えたりすることができます。

ここでは「気温」「降水量」「植物季節」「樹木の成長と森林バイオマス」「土壌侵食」の5項目と、気候変動の関係を考えてみましょう。

気候変動は何をもたらす?

気象因子による実態把握

「気温」や「降水量」を、どこか身近な場所で継続的に測定することによって、地球温暖化の進行を確かめることができます。季節外れの高温や低温、極端な豪雨や寡雨などを記録することにより、平均気温の上昇にとどまらない、気候変動の多角的な実態を把握することができるでしょう。

森林生態系への影響を考える

「気温」が変化すれば、昆虫や動物も生息域を変化させます。植物は移動できないため、開花や落葉などの「季節現象」の時期を変化させますが、適応しきれず「樹木の成長」が低下することもあります。「降水量」の増加も「土壌侵食」の原因となったり、化石燃料から大気中に放出された窒素酸化物を土壌に降下させたりして、植物の「季節現象」や「樹木の成長」に影響を及ぼします。

結果として、環境変化に適応できない植物の衰退や、気象害、病虫害の発生などを引き起こし、森林が持つ多面的な価値を損なう可能性があります。


気候変動を評価する

気候変動と森林の生態系の間には、このように複雑で密接な関係があります。

「気温」や「降水量」といった気候の直接的な因子だけでなく、「季節現象」「樹木の成長」「土壌侵食」などを測定することにより、気候変動をさまざまな視点から確かめたり、推定したりすることができ、生態学的な視点からその実態に迫ることができるのです。

関連する測定項目の一覧

気温

森林内で気温を正確に測定するための、適切な温度計の選択や設置、記録の方法について説明します。  

降水量

ポットと漏斗によって比較的簡便に観測できる「貯留型雨量計」を中心に、雨量計や設置場所、測定時の工夫について説明します。

植物季節

「開花」「落葉」などの季節現象を把握するための、観察木の選定や、現象の定義、画像の記録についての方法を紹介します。

樹木の成長と森林バイオマス

樹木の直径と高さを調査し、森林のバイオマスを算定する原理と方法を解説します。

土壌侵食

降水や斜面の表面流などによって起こる土壌侵食の強度を、林床被覆率と土壌侵食跡の調査から評価する方法を解説します。