樹木の衰退度の測定方法(森林立地調査法第Ⅱ章 12衰退度測定法)
関東平野でのスギ林の衰退現象は1960年代には確認されていたが、1970年代にヨーロッパでの湖沼の酸性化が問題となり、石炭や石油などの大量燃焼によって放出された酸性降下物と森林衰退との関係に関する研究が盛んに行われるようになった。関東平野で寺社境内のスギ高齢木での葉量減少や枯れ下がりなどの衰退現象の原因として、酸性雨や大気汚染、土壌酸性化、土壌の窒素過剰やマグネシウム欠乏など、様々な検討がなされたが原因等は断定されなかった。関東平野でのスギ高齢木の推定では、成長期の大気の乾燥度合い(Sakata 1996)や土壌の物理性(伊藤ほか 2002)との相関があることが報告されている。
温暖化に伴う気候変動では、気温の上昇だけではなく季節外れの高温や低温、異常な豪雨や寡雨などの極端気象などの頻度が高まることが推測されている。
調査方法
年に1回、決まった位置から観測木の樹冠の写真を撮影する。
樹冠の葉量減少と枯れ下がりの判定基準については、森林立地調査法を参照
伊藤江利子・吉永秀一郎・大貫靖浩・志知幸治・松本陽介・垰田宏 (2002) 関東平野におけるスギ林衰退と土壌要因.森林立地 44:37-43.
松本陽介・小池信哉・河原崎里子・上村章・原山尚徳・伊藤江利子・吉永秀一郎・大貫靖浩・志知幸治・奥田史郎・石田厚・峠田浩(2002)関東平野における樹木衰退の1999年~2001年の状況.森林立地 44:53-62.
Sakata M (1996) Evaluation of possible causes for the decline of Japanese cedar (Cryptomeria japonica) based on elemental composition and δ13C of needles. Environ Sci Technol 30:2376-2381