樹木の成長

樹木の成長の測定方法
(森林立地調査法第Ⅱ章6成長量測定法、8バイオマスの測定)

概要

 樹木の成長は、幹の太さ(胸高直径:1.3 mの高さの幹の直径)と高さ(樹高)の増加によって表されます。樹木の集合体である森林の成長は、平均樹高や土地面積あたりの胸高断面積合計(1.3 mの高さの幹の断面積の合計)・蓄積(幹材積の合計)などの増加によって表されます。樹木や森林の成長にともない、樹木や森林に蓄えられている炭素量の増加を知るためには、バイオマスの測定が必要になります。森林のバイオマスを継続して測定することにより、年あたりのバイオマス増加量(成長量)を測定することができます。バイオマスは生物体量(乾重量)のことであり、ある時点に、ある空間に存在するバイオマスを現存量といいます。森林のバイオマスは樹木を伐採して測定した乾重量を用いて算定する方法と非破壊的に測定可能なデータから算定する方法があります。ここでは、樹木の成長の測定方法とバイオマスの非破壊的な算定方法を解説します(伐採して行う方法については、「森林立地調査法 第Ⅱ章 8 バイオマスの測定」を参照)。測定対象とする森林に生育する樹木の樹種と胸高直径、樹高から立木幹材積表を用いて乾材積を求め、材の容積密度(全乾比重)、幹の乾重量と地上部全体(幹、枝、葉)の乾重量の比(拡大係数)、地上部乾重量に対する地下部乾重量の比を乗じて個体全体の乾重量を算出し、対象森林の全樹木の乾重量を足し合わせて対象林地のバイオマスを算出します。

樹木のバイオマス測定原理

 胸高直径と樹高を変数とした立木幹材積表が主要な樹種について調整されており、立木幹材積表を用いて非破壊的に幹材積を求めることができる。幹材積の幹の容積密度(全乾比重)乗じることによって幹乾重量を算出できる。スギやヒノキの人工林のように同齢単一樹種の森林においては幹乾重量と枝や葉の乾重量との間に相関関係があり、地上部乾重量と地下部乾重量との間にも相関関係があることが知られている。これらの相関関係は、樹種によって異なり、同じ樹種でも林齢や場所によって異なるため、正確なバイオマス推定にはそれぞれの森林で相関関係を調べる必要があるが、平均的な相関関係を用いることによって大まかなバイオマス推定を行うことができる。

森林バイオマスの調査方法

1.調査区設定 対象とした森林に、方形の調査枠作る。 (道具:50m以上のメジャー、コンパス)

決まった樹木の成長を測定する場合ではなく、樹木の集団(森林)の成長量を土地面積あたりで測定する場合には、樹種構成や樹木の大きさが代表的な場所に調査区を設定してその中の樹木を測定する。測定する樹木に番号を付しておく(写真のようなナンバーテープ等を利用)ことが、何年にもわたって測定を続ける場合には必要。

2.毎木調査

調査枠内の胸高(1.3m)の幹の周囲長が、6cm以上の全ての樹木を対象として
・葉の形や樹皮から樹種を調べる。
・胸高の周囲長(cm)、樹高(m)を測定する。
・調査が済んだ樹木には、チョークで横線などを引いて、調査が済んでいない樹木と区別しておく。

(ここの部分は動画?) 胸高直径の測定方法(輪尺、直径巻尺の使用方法と注意点)、VerTexによる樹高測定、測高ポールでの測定、スマホアプリでの測定

(道具:樹木図鑑、2~3mのメジャー、赤白ポール、チョーク)

じゅもくずかん

樹木図鑑
めじゃー

メジャー
あかしろぽーる

赤白ポール
ちょーく

チョーク

3.データの入力

パソコンに樹種、周囲長、樹高のデータを入力する。 周囲長を円周率で除して直径に変換する。さらに、四捨五入で2cmごとに括約した直径データに変換する。

(道具:パソコン、表計算ソフト)

ぱそこん

パソコン

表計算ソフト

4.バイオマスの推定

1本ごとにそれぞれの樹種の立木幹材積表(日本林業調査会から発行)を用いて、胸高直径と樹高から幹材積を求める。東日本の森林については、(国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所で公開している幹材積計算プログラム(https://www.ffpri.affrc.go.jp/database/stemvolume/index.html)も利用可能である。

材積表:胸高直径と樹高の2変数材積表を例示。
材積表の場合、細い樹木については一桁でしか表示されない。個々の樹木の成長量を求める場合には、材積式を用いて材積の差(成長量)を計算する。

1本ごとに幹材積に容積密度を掛けることにより、幹の乾燥重量を推定する。幹の乾燥重量に、ほかの部分(葉、枝、根)の相対成長式を掛けることにより、1本の乾燥重量を推定する。調査枠内の全樹木の乾燥重量を合算することで調査枠の中の森林のバイオマスが求められる。 一般的に、ほかの森林のバイオマスと比較しやすくするために、バイオマスの単位はトン(t)またはメガグラム(Mg)に変換する。さらに面積1ヘクタール(ha)あたりのバイオマスに変換する。結果的に単位は(ton/ha)または(Mg/ha)となる。

また、地上部(葉、枝、幹の合算量)だけのバイオマス量の報告事例が多いので、地上部と地下部(根)に分けたバイオマスも、結果に併記しておくと比較しやすいので良い。

(道具:パソコン、表計算ソフト)

  • 表.係数の一例(日本温室効果ガスインベントリ報告書(2008.5)から抜粋)

   (http://www.cger.nies.go.jp/publications/report/i085/i085.html

 

拡大係数

地下部/地上部比

容積密度(t/m3)

20年生以下

21年生以上

針葉樹

スギ

1.57

1.23

0.25

0.314

ヒノキ

1.55

1.24

0.26

0.407

アカマツ

1.63

1.23

0.27

0.416

カラマツ

1.50

1.15

0.29

0.404

トドマツ

1.88

1.38

0.21

0.319

エゾマツ

1.92

1.46

0.22

0.348

イチョウ

1.51

1.15

0.18

0.451

広葉樹

ブナ

1.58

1.32

0.25

0.573

カシ

1.52

1.33

0.25

0.629

クヌギ

1.36

1.33

0.25

0.668

ナラ

1.40

1.26

0.25

0.619

ケヤキ

1.58

1.28

0.25

0.611

カエデ

1.33

1.17

0.25

0.519

留意点

 上記方法では、森林の炭素貯留量を求めるために国全体の森林バイオマスの算定に用いられている林齢によって2区分した拡大係数を例示したが、実際には樹木が大きくなるに伴って拡大係数は徐々に小さくなる。また表に示した地下部/地上部比と容積密度も平均的な値であり、同じ樹種でも成長状態や品種によって異なる。したがって、上記方法によって算定された森林バイオマスは大きな誤差を含む場合があることに注意が必要である。同じ森林を定期的に測定し、バイオマスの経時変化をモニタリングする場合には、胸高直径と樹高から求まる幹材積は比較的精度が高いことから、蓄積(対象林地の幹材積の総和)をバイオマスの指標として用いることが多い。

試しに1本の樹木のバイオマスを測定してみよう。

家の庭や公園などに生育している樹木の中から、測定木を決めます。
ここでは茨城県にある1本の樹木を選びました。

まず樹種を判定します。

これはスギですね。常緑針葉樹です。

胸高(1.3 m)の幹直径と、樹高を測定します。

幹の1.3 m の高さ(長さ)にメジャーを巻きます。斜面に生育している樹木の場合は、山側に立って高さを測ります。幹の後ろ側にコブがないか、メジャーが斜めになっていたり、裏返っていたりしていないか確認します。
コブがあったら上か下にずらして、1.3 mにこだわらずに通直な場所を選びましょう。

メジャーを2~3回左右によくしごいて、幹の周囲長の数値をmm単位で記録します。

測定が終わったら、次回の調査用に、測定箇所にはマジックや木材チョークなどで横線などをつけておくとよいでしょう。

つぎに樹高を測ってみましょう。

樹高を精度良く測る場合には、測高桿や超音波デジタル測高計を用います。おおよその樹高を求める場合には、対象木に長さ2 mの赤白ポールを立てて、高さ(長さ)を目測する方法もあります。根元と同じ高さに2 mの棒を立てます。まず根元から樹冠の先端まで高さを半分にします。さらにそれを半分にします。その高さと2 mの棒の高さを比較します。このスギは、棒8本分の高さ、約16 mがあると見えます。

幹の周囲長は手もとで触りながら測定できるので、誰が測定しても比較的、誤差を少なくすることができます。
ところが樹高はどんな方法や道具を使っても、最終的には人間の目が「高さ」を判断あるいは想像しますので、どうしても測定誤差が大きくなります。大きな樹木であればあるほど、その先っぽ(梢端)は高くなって見えにくくなり、幹・枝が判然としない広葉樹であればなおさらです。そのためAさんが測定した樹高が10 m、Bさんが測定した樹高が9 mだったというようなことが起こりえます。Aさんが目視で測定した樹高が10 m、同じAさんがデジタル測量機械で測定した樹高が9 mだったというようなことも起こりえます。この結果、それぞれで推定した材積は10%程度も異なってしまいます。本当の値は対象とした樹木を伐採しないと得られませんが、これは現実的ではありませんね。このような測定者や測定方法による誤差を減らすためにはどうしたらよいでしょう? 一番に重要なことは、方法や道具にかかわらず、対象とした樹木の最も低い部分と最も高い部分の両方が見える「測定場所を選ぶこと」です。できるだけ離れたところから根元と梢端部分を見る。山の中なら対象樹木の斜面上側に回って見る。このように、人間の目で想像する範囲を極力へらすことで、測定誤差を減らすことができます。

以上により、つぎのような樹木のデータが得られました。
 樹種:スギ  胸高の幹周囲長: 146.8 cm  樹高: 16 m
 胸高の幹直径: 146.8 cm ÷ 3.14 = 46.8 cm(以後、胸高直径と呼びます)

幹の材積を計算してみましょう。

森林総合研究所が開発した「幹材積計算プログラム」を活用して、樹種、胸高直径、樹高を入力して幹材積を計算します。 

まずプログラムをインストールします。注意書きを読んで承諾してから、ページ最後のダウンロードボタンを押します。

得られた圧縮ファイルが、ダウンロードフォルダに保存されます。

新規作成したフォルダ「幹材積計算プログラム」に圧縮ファイルを移してみます。圧縮ファイルを右(B)クリックして「全て展開」すると、同名のフォルダが作られました。

同名のフォルダの中には、「幹材積計算プログラム」と「幹材積計算プログラム説明書」の2つのファイルがあります。

幹材積計算プログラム説明書を読んでから、幹材積計算プログラムを開きます。「コンテンツの有効化」を選択します。

このあと、なにも入力などせずに「名前をつけて保存」しますが、保存するときのファイル形式をExcelマクロ有効ブックからExcelアドイン形式で保存します。

ファイルを閉じて終了します。
つぎにExcelを起動して新規ファイルを作成してみます。ここでは新規ファイルの名前はそのまま「book1」にしました。そして「ファイル」->「オプション」->アドイン->「設定」->「幹材積計算プログラム」をチェックします。これで幹の材積の計算式がインストールされました!

ここから、幹の材積の計算を始めます。

得られたデータを次のように入力してみました。

つぎに立木幹材積のセルを選択してからfxボタンを押して、計算式「stemvolume」を選び入れます。

樹種(Name)、胸高直径(D)、樹高(H)のあるセルを、計算式にひとつひとつ指定してOKを押します。

「スギという材積表は収録していません。」どうも、このままではうまくいかないようです。。。

 

説明書をよく読むと、こうした樹木サイズ(胸高直径や樹高)と幹材積の関係には地域性があるということでした。なので、単なる「スギ」ではなく、「地域名+スギ」の名前を樹種に入力しなければなりません。

説明書の中に、地域ごとの対応表がありました。茨城県は「東京」の区分に対応するとありますね。

東京エリアのスギは「東京スギ」と入力するように指示がされていました。

「東京スギ」と樹種名に入力し直すと、

表1.スギ1本の立木材積表

うまく計算できました!

このスギの幹材積は、1.17 m3であると推定できました!

上記の幹材積から、幹の乾燥重量(バイオマス)を計算します。

国立環境研究所地球環境研究センターの「日本国温室効果ガスインベントリ報告書 —2008年5月—」の219ページを見てみましょう。

219ページの「表 7-4 森林簿樹種のBEF、Root-Shoot ratio、容積密度数」の中に、容積密度:Dという値が示されています。容積密度とは、乾燥していない木材 1 m3あたりの乾燥重量のことです。この係数を幹材積に掛けることで幹の乾燥重量を求めることができます。スギの項目を見ると容積密度は0.314 (ton / m3)と示されています。

1.17 × 0.314 = 0.367

このスギの幹の重量は 0.367 ton (367 kg) であると推定できました。

 

炭素に換算する場合、0.5を掛けます。

このスギの幹の炭素量は 0.184 ton (184 kg) と計算できました!

胸高直径と樹高の測定は誤差が大きいと、幹材積の推定値に大きな影響を及ぼします。とくに毎年や、複数年毎に測定し経年変化を追跡する場合は、より精度の高い測定方法を選択する必要があります。

よくある質問

Q: 調査枠はどのくらいの大きさが必要ですか? 形はどんなものがよいですか?
A: 対象とした森林のうち、何を知りたいのかによって、調査枠の面積や形、数が変わります。地形によって森林内の樹木の種や大きさが変わるなら、それらが含まれるように広く大きく調査枠を設定することがあります。あるいは小さな調査枠を森林内にたくさん設定して調査することもあります。しかし、それらは設定と測定にたいへん時間がかかってしまいます。 まずは、全体の地形や森林のタイプを歩いて見回ったうえで、代表的な場所を決めて、実施可能な大きさ、形の調査枠で測定をおこなうことをお勧めします。


Q: 枯れ木がありました。樹種名もわからないのですが、測定するべきでしょうか?
A: 枯れ木は死んでいますので、生物体量(バイオマス)の測定対象にはなりません。しかし重要な炭素の格納庫(炭素プール)として、別の方法で測定されることがありますので、詳しく知りたいときは森林土壌の炭素蓄積量調査のWebサイトを見てみてください。

Q: 樹種名に対応する立木幹材積表を探したのですが、見つかりません。どのように現地の調査後の計算をしたらよいでしょうか。
A: 全ての樹種について、立木幹材積表が作成されているわけではありません。なので、生活型(広葉・針葉、常緑・落葉、高木・低木)がよく似た樹種の立木幹材積表を探して、代用して使いましょう。そのときは計算方法に、代用したことを明記しましょう。

詳しくはこの本

森林立地調査法
第Ⅱ章 6 成長量測定法、8バイオマスの測定 森林立地調査法編集委員会編、63-64p 1999 博友社、東京