植物季節

植物季節の測定方法 (森林立地調査法第Ⅱ章 3植物季節の測定)

温暖化による気候変動が自然植生の季節現象に与える影響を長期モニタリングする。

 

植物は、決まった季節に芽吹き、開花し、落葉するなどの季節現象(フェノロジー)を示す。春に花を咲かせる植物もあれば、夏や秋、冬の植物もある。短日植物や長日植物では、花芽の分化が日長によって規定される。花芽が膨らみ開花に至るためには温量が必要である。またソメイヨシノのように冬季に低温を経験することによって花芽の休眠が打破される種もある。遺伝特性が同一であるソメイヨシノの開花日が地域によって異なり、同じ地域でも年によって異なるのはそのためである。寒い冬のある地域に生育する樹木は、寒くなる前に冬芽を形成して冬を迎える準備をする。日長の変化と気温の変化との関係は緯度によって異なり、緯度が高いほど日長と気温の年間での変化が大きい。様々な地域から集めたブナを一カ所で生育させて観察した例では、生育地の緯度が高いほどより早い時期に冬芽形成が誘導される傾向が示されており、生育地の環境への遺伝的適応が認められている(中田・中山 1995)。

近年、温暖化に代表される気候変動が顕在化し、季節外れの高温や低温が観測されることが頻繁になってきた。季節外れの低温は、早霜や遅霜などの気象害の原因となる。温暖化しても日長の季節変化は変わらないことから、自然植生にどのような影響が生じるかが危惧される。

調査方法

複数の観察木を定め、毎年、同じ樹木を観察する。樹冠全体ではなく枝を特定して観察する場合には、樹木の樹高成長によって観察している枝が徐々に樹冠の下層になりやすい。観察木が成長しても日陰にならない枝を選定する必要がある。

 

冬芽が膨らみ、開芽してから葉の展開が終了するまで数週間を要する種があり、また最初の冬芽の開芽から樹冠全体の開芽が終了するまでも数週間を要する。3日おきに観察木の樹冠もしくは枝の写真を同じ位置から撮影し記録する。どの段階で開芽日とするかについては、統一的な定義がなされていないため、どのような定義で開芽日を確定したかを定めるとともに、他者のデータとの比較が可能なように画像データを保存する。

 

気象庁の生物季節観測方法では、紅葉日と黄葉日を「かえでの紅葉日とは、標本木全体を眺めたときに、大部分の葉の色が紅色に変わった状態になった最初の日をいいます。」、「いちょうの黄葉日とは、標本木全体を眺めたときに、大部分の葉が黄色に変わった状態になった最初の日をいいます。」と定義している。

紅葉や黄葉が生じる時期に3日おきに観測木の樹冠の写真を同じ位置から撮影し、画像に基づいて紅葉日や黄葉日を確定するとともに、紅葉や黄葉の進み具合を年で比較できるようにする。

 

気象庁が行っている生物季節観測の情報は、気象庁のホームページに掲載されています(http://www.data.jma.go.jp/sakura/data/)。

 

中田誠・ 中山昇:産地の異なるブナの成育状況とフェノロジー.新潟大学農学部演習林研究報告,Vol.28, pp.17-28,1995年02月